症例を少しずつ紹介させていただきます。今日はお子さんの開咬です。開咬とは奥歯を咬み合わせた時に、上下の歯に隙間が開いている状態のことをいいます。原因は、舌を上下の歯の間から押し出す、長期にわたって指などをしゃぶる、咬む力が弱く口がポカンと開いている等々…。写真の患者さんのように上下の前歯に隙間が開いていると、前歯で食べ物を咬み切れない、口びるが閉じにくい、発音が不明瞭になるなどの不具合が生じます。自然に治ることはほとんどありません。ほっておくと、ますます隙間が開いてきます。まずは開咬の原因を見つけ、原因である習慣やお口周りの環境に対して早期のアプローチが重要になります。
このお子さんは4人姉妹の長女で初診相談時は8歳でした。お母さんが「前歯で麺類が咬み切れないようなのだけど、よく見てみたら前歯が咬んでいないのでみてほしい」というのが来院のきっかけでした。1歳から5歳まで指しゃぶりをしており、また、舌で前歯を押したり、下くちびるを咬んだりする癖がみられましたので、Ⅰ期治療ではタングガード(舌が前歯にあたらないようにする装置)とポジショナーの使用と、バイトトレーニング(咬む力をつける練習)を1年半行い、かなり症状が改善されました。Ⅰ期治療を行うことでⅡ期治療(本格的な矯正治療)がとても楽になります。永久歯に生え代わった後、必要に応じてⅡ期治療をする予定です。